AGA(男性型脱毛症)は、男性に見られる髪の毛が薄くなっていく症状のことです。現在ではそのメカニズムについては解明されており、治療するためのAGA治療薬も3種類ほど開発されています。AGAの原因物質は、男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)を生成する、「5αリダクターゼ」という酵素です。今回は、抜け毛の仕組みとAGAの原因物質である5αリダクターゼについて解説します。
5αリダクターゼについて
5αリダクターゼは、男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)を生成する働きがある酵素で、AGAの原因物質です。男性ホルモンは思春期以降、その分泌量を増します。そのため、男性は体つきや体毛などが大人の男性に変化します。ですが、この男性ホルモンが増加することでAGA症状も進行します。代表的なAGA治療薬であるプロペシア・ザガーロなどは、この5αリダクターゼの働きを阻害することで、AGAの進行を遅らせる作用があります。
5αリダクターゼとAGAの仕組みについて
男性ホルモンはAGAの大きな要因です。それ単体というよりも、5αリダクターゼと関わることでAGAの
原因物質へと変化してしまいます。では、このようなAGAの仕組みについてご説明します。
AGAの原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)
AGAの原因物質は「DHT(ジヒドロテストステロン)」と呼ばれるもので、「テストロン」という男性ホルモンと5αリダクターゼが反応しあうことで変換して生成される男性ホルモンです。DHTが毛乳頭細胞の「男性ホルモン受容体」と結合すると、成長している毛髪の成長が停止します。この結果、髪の生え変わりのサイクルが早くなってしまい、髪が成長して太くなる前に抜け落ちてしまったり、細い毛ばかりになってしまいます。これが、AGAの仕組みです。
AGAとヘアサイクルについて
髪のヘアサイクルは、AGAやその治療とも密接な関係があります。大きく3つに分けることができ、それぞれに期間と役割があります。
区分 特徴 期間
成長期 髪の毛が成長し伸びる時期 2年〜6年
退行期 髪の毛の成長が止まる時期 2週間程度
休止期 髪の毛が抜け落ちる時期 3〜4か月程度
ヘアサイクルには、成長期・退行期・休止期があり、髪の毛はこの期間を経て、成長し抜け落ちます。しかし、AGAの原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)は、このヘアサイクルを乱してしまいます。通常「2年〜6年」ある成長期が短縮してしまい、短い場合はおおよそ「数か月」まで早まります。そのため髪の毛が成長しきれず、細くて短い毛のまま抜け落ちてしまうことで、AGAが進行してどんどん薄毛になってしまいます。AGAの原因や進行速度には個人差がありますが、このような原因物質やヘアサイクルの仕組みは皆さん共通です。
5αリダクターゼの型に見る特徴
箇所 | 特徴 |
Ⅰ型5αリダクターゼ | 側頭部・後頭部・または全身 脂性肌(オイリー肌)の方 |
Ⅱ型5αリダクターゼ | 前頭部・頭頂部に多く存在 体の体毛や髭などが濃い方 |
5αリダクターゼには、Ⅰ型とⅡ型という2つのタイプが存在します。人によってどちらの5αリダクターゼが多いのか、違いがあります。AGA治療においてはこのタイプの違いによって選択する治療薬が変わってきますので、ご自身のタイプを把握しておくことで、治療がスムーズに進むメリットがあります。
5αリダクターゼを阻害するAGA治療薬
AGA治療薬の中でも、原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を促進する「5αリダクターゼ」を阻害する働きをもつ薬は、以下の2種類です。
- プロペシア(フィナステリド錠)
- ザガーロ(デュタステリド錠)
- プロペシアはⅡ型5αリダクターゼに効果
プロペシアは、低用量で男性型脱毛症(AGA)に対しての脱毛抑制効果が認められている、世界初のAGA治療薬です。元々アメリカで前立腺肥大の治療薬として開発が開始されました。しかしその開発の過程で、有効成分の「フィナステリド」に、男性の脱毛症状に効果があることが判明し、1997年にアメリカで認可されました。Ⅱ型5αリダクターゼに高い効果があります。
ザガーロはⅠ型・Ⅱ型両方の5αリダクターゼに効果
ザガーロは、グラクソ・スミスクライン社が開発した男性型脱毛症(AGA)治療用の内服薬です。有効成分はデュタステリドで、AGAの治療薬として使われる以前から前立腺肥大症(BPH)の治療に効果があることが知られていました。ザガーロはⅠ型・Ⅱ型両方の5αリダクターゼに効果があるため、有効範囲が広い事が特徴です。
AGAの投薬治療について
前述のように、AGA治療に用いられる代表的な治療薬はプロペシアとザガーロで、明確な作用機序があり、安全性も証明されています。またもう一つ有名な外用薬として、ミノキシジルがあります。患部に塗布するタイプの外用薬で、こちらは血管を拡張する作用によって、頭皮の血行を良くして発毛を促す効果があります。これらの薬には相互作用が無いため、併用してさらに効果的に治療することも可能です。プロペシアとザガーロのどちらかとミノキシジルを併用する方が多く、希望される場合は医師に相談して指示を仰ぐようにしてください。
AGAの仕組みを理解してより効果的な治療を
以上、抜け毛の仕組みとAGAの原因物質である5αリダクターゼについて詳しく解説させていただきました。AGAには明確な原因と仕組みが存在し、その原因物質が5αリダクターゼです。5αリダクターゼの型を理解しておくと、ご自身の治療に役立ちます。現代ではAGAは治療不可能な病気ではありません。しっかりと治療薬の服用を継続することで、改善の効果が見込めます。そして、少しでも多くの髪の毛を維持しようとするならば、迅速な治療開始が必要です。AGAについて正しく理解し、より効率的な治療を継続していきましょう。